3つの思い

『思い』を汲み取る

ご相談いただく着物、それぞれ一つ一つに、思い出やエピソードがあり、特別な思い入れがあるかと思います。

『ミニ着物』は、『思い出の写真』のようなものだと思います。

ふと眺めたとき、大切な人との記憶や、感情。いろいろことを思い起こさせてくれるでしょう。

一緒に料理を作ったこと。
友人と出かけた事を、楽しげに話していた表情。
どれもこれも、かけがえのない、思い出です。

だからこそ、お預りの際には、その想いをしっかりと汲み取る。という事を大切に考えています。

一分(いちぶ)へのこだわり

親子2代・70年の間、10代から仕立て業をしてきましたが『着られる方の立場になる』事を大切にしています。

永い間、良い状態で保存し、着やすく、見栄え良く、歩いた時も綺麗で、何より着ている方が心地よい。
理想の仕上がりのため、標し(しるし)、断ち、縫い、一つ一つの作業で1ミリにこだわり続けています。

着物はタンスに収納して置く期間も長く、年を重ねて行くうちに、湿度や布地によって縮んでしまいます。
仕立ての寸法ズレや、年数経過による縮みは、着やすさ、見栄え、心地よさに直接影響します。

縮んでしまうと、裏と表がぴったりしない。胴剥ぎのおさまりが悪い(袋になる)など美しくありませんし、何より、袖通しで肩のあたりが窮屈になったり、心地よくありません。

付け下げ、お振袖など、柄の大きいものは、柄あわせで見栄えを良く。人それぞれの体型に合わせた首の回りの加減、裾の捌き、襟周りを美しく、歩いた時に綺麗に見えるように・・・。

長年かけて体得した技術で、1ミリ、2ミリの細かい作業を積み重ね、仕立てた着物をお渡しした時、お客様が「自分に合った仕立て方をしてもらえた」と、喜ぶ姿をみると、大変嬉しく思います。
「仕立ての仕事を続けていてよかったなぁ」と、心から思う瞬間です。

そんな着物の仕立てを、そっくりそのままサイズを小さくしたのが、私達の製作する『ミニ着物』です。

リメイクする=鋏を入れてしまう。ということは『着る物』としての役割は無くなります。

袖の長さ、着物の柄、色加減…。布地により裾捌きを良く見えるよう、襟下の位置をどうするか。また、裏地の配色、それに合わせた比翼の色使い、飾った時の具合など、細部に気を配ります。

鋏を入れたからには『第二の役割のために活かしきる』という気持ちで、丁寧に、時間をかけて使える所を探します。

『想い』を紡ぐ

私達が着物を製作する時、着る方の姿や、シーンをイメージして、語らいながら作業しています。

ミニ着物の製作でも、それは同じです。
思い出やエピソード、それを着られてた方と、着物を照らし合わせています。

布地の年代、柄の流行、手触りで「何才くらいに着ていたかな?」
表地・裏地の色の使い方で「お茶会、お祝い事、旅行・・・どこに出掛けて行ったのかな?」
汚れ具合で、着た頻度を。手入れの仕方を見て「大切な時だけ着用したのかな?」
そんな事を話ながら、感じ取りながら、思いを馳せます。

リメイクして『ミニ着物』になり、お手元に届いた時。
ご自分の物として『いつも、そばに置きたい』と、大切に想っていただけるもの。
身近に飾れば『大切な人との記憶』を蘇らせ、その存在を感じとれるもの。

そのようなものとして、お渡しできれば、私達にとって、それ以上の喜びはありません。